遺言書の作成は「配慮・工夫・知識」も必要です!!

遺言書作成の心構え、考え方やポイントについて

1. 遺言自由の原則と遺言書作成の配慮・工夫

皆さんは「遺言自由の原則」という言葉をご存じでしょうか。遺言書の作成は国内でもかなり増えてきており、また、「終活」として代表的な対策のひとつです。遺言書は「遺言自由の原則」の言葉が示すように、遺産の処分等について書き記す内容は遺言者の自由です。ただし、何でもいいという訳ではありません。例えば(例としては適切さに欠けるかもしれませんが)、籍を入れていない愛人への遺贈を記した場合、それを記した背景・状況によっては、「公序良俗に反する」として無効とされることも裁判ではあり得るからです。

いずれにしても、後を継ぐ者に対し自分の最終意思として書き上げ、完成させたことで、すでに安心と満足感を得ている方々も多いかもしれません。そして、書き上げた遺言書について「何も専門家に相談せずとも、これで意味が分かるので十分。自書・署名・押印・日付等の形式要件も問題はない・・・」と考えている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、改めて考えて見てください。遺言書の作成目的は「書き記すことが目的ではなく、その内容を実現させることが目的である」ということを!!実際、相続発生後、せっかくしたためた遺言でもその内容や書きぶりによっては相続人等が揉めてしまうケースがよくあるのです。また、その執行の事務手続きに困惑してしまうケースもよくあるのです。
ひとつ簡単な例を考えてみます。「自分の居宅を○○に渡そう」としたとき、皆さんは遺言書でどのような表現をするでしょうか。
「不動産△△は○○に任せる」「不動産△△を○○に託すこととする」「不動産△△は○○に管理させる」等々・・・表現には、特に法的な取り決めもないため、どれも意味は通じます。しかし、専門家の立場で見るとこれらは「配慮に欠けた表現」と言えるのです。不動産のようなプラスの財産の承継を考えた場合、表現としては「△△を○○に遺贈する」「△△を○○に相続させる」のどちらか2つの表現に統一するということをよくアドバイスします。いくつか理由がありますが、まず下表を見てください。
表現 意味 表現による受益の対象 法的効果
「相続させる」 相続発生後、その財産の権利・義務を承継させること 法定相続人のみ 相続発生後、対象者に即座に権利移転が確定する
「遺贈する」 相続発生後、無償でその財産を譲渡すること 法定相続人の他、それ以外の第三者も対象にする 相続発生後、権利移転の効果は得られが、その確定は「遺贈の履行」を要する
この2つの表現は、民法に則した表現方法です。一見同じ意味と思われるかもしれませんが、上表のとおり、この2つは意味合い等が違います。また、この2つの表現を推奨する理由は、議論を待たず法的効力を確実に担保できる点です。表現の意味が明確であり、前述の「託す」等の表現とは、一線を画します。補足しますと、対象財産が不動産ならば、遺言の執行において、内容に即した名義変更等の「登記」を法務局宛て申請します。不動産を「相続させる」という表現ならば、受益対象となる相続人が単独で登記を申請できるのに対し、「遺贈する」なら、遺贈登記として、原則、法定相続人全員が登記義務者となるため、その手続きにも違いが生じます。ただし、遺言書で遺言執行者の指定があれば、その遺言執行者が登記の義務者として手続きが可能となります。その意味でも、遺言書作成時の遺言執行者の指定は重要です。
また、相続に伴う登記の原因には「相続」や「遺贈」等がありますが、前述の「託す」や「管理させる」等の曖昧な表現では、これらの登記原因に断定的な当てはめができないことになる等も懸念され、適切さに欠ける表現と言えます。

2.他にも配慮や工夫を施すべきことがある

以上より考察すると、遺言作成者がひとつの表現や内容にも配慮することは、相続発生を機に遺言書を受け取り、それを実現させる相続人等にとっては大切な意味があるということが言えます。
一例ですが、次のようなことも想定して遺言書を作成すべきと考えます。
仮に「この自宅は同居している長男に相続させよう」と考え、それを遺言書に記すとします。しかし、ここでひとつの配慮をすべきと考えます。それは、「もし、自分より先に長男が他界したとしたら・・・」という点です。
縁起でもない話かもしれませんが、万が一このような不幸が起こるケースも想定すると、遺言書の文言に「もし、長男が遺言者よりも先に、もしくは同時に死亡した場合には、当該財産は○○に相続させる」と予備的な文言を加えておいた方が、適切と言えます。なぜなら、実際に相続が発生した時点において、遺産を承継指定した者が先に亡くなってしまっていた場合、当該遺言部分は無効となるからです。結果、この自宅は他の相続人の遺産分割協議対象財産となってしまうため、遺言者の意図とは違う方向性を辿ることも考えられますし、別途の遺産分割という相続人の負担にもつながります。このような「予備的遺言」等も必要に応じ検討することも大切です。
ケースにより配慮・工夫すべき点は他にも多くありますが、そのポイントは、自分の意向を記す事項のそれぞれに法的に効力があるか(法定遺言事項に則しているか)等の観点を持つこと、相続人に自分の気持ちや考え方を納得させる文面にするにはどうしたらいいのか等を考慮することが、遺言書作成には大切にです。加えて、確かな遺言の実現のためには、後を継承する者に「どうして、このような内容にしたのだろう。遺言者の真意が良く分からない」という感想を持たせない配慮がとても重要です。例えば、遺言書内に遺言者の真意を伝える付言等を加え、遺言者の想いや考え方も忘れずに書き記しておくことで、遺言書を受け取る側に納得感をもたらすことが期待できます。何を書いても自由という「遺言自由の原則」はそこで大きく活かすべきです。


当事務所は、専門家として心のこもった「遺言者の意思を実現させる遺言書」の作成をお手伝いします。

※なお、当掲載文に関連して、当ホームページ「関連コラム(専門家の視点)」に、「様々な想いを実現する遺言書の文例について」等遺言書作成に役立つ記事を掲載しております。是非、ご参照ください。
                        (2026年2月~文責 小山田 真)