離婚を決めたら・・・。将来に繋がる離婚の在り方

離婚の準備とその進め方について・・・

 現在、日本では離婚件数が年間約20万件に達しています。本稿に目を通している皆様においては、離婚を真剣に検討している方もいらっしゃるかもしれません。勿論、当事務所はその手続きにおける相談と書類作成(離婚協議書等)のサポートも行っています。しかし、現実的に心労を抱えている場合、即座の意向伝達を考えている場合は、アクションを起こす前に、まず、本稿を一読してください。本稿では、離婚の主流である「協議離婚」で決着を目指すということを想定して話を展開していきます。 

1.    離婚意向の伝達を感情で覆いつくさない・・・
 夫婦生活を続けていく中、関係がもたらすストレスや積み重なる心傷に耐えかね、その想いが我慢の限界に達しているケースもあると思います。しかし、感情的となった意思伝達は、相手の反発心を煽り、スムーズな離婚成立を困難にしてしまうリスクもあります。また、後先を考えない咄嗟のけんか別れに至った場合は、先々後悔として自分に帰ってくることが多いと考えます。従って、意を決し相手にその感情を一気に吐露する前に、まずは、一拍置くこと、そして自分の心を今一度、客観的に見つめるべきです。今後の落ち着いた展開、協議の展開に持ち込むためにも、それが極めて重要です。見つめるべき視点は以下3つに集約されます。
 相手に対する愛情はもう残っていないか
  関係改善の余地はないか(相手との心のコミュニケーションは十分だったか)
   離婚の決定に後悔はないか
特に、①の視点は、意思決定の判断基準としては最も大切なものと言えます。何故なら、少しの愛情の存在であっても、②の関係修復の努力(試み)に繋がり、良くも悪くも妥協点を見出す可能性を秘めているからです。逆に愛情の欠落状態は、家庭生活の物理的環境や経済水準に問題はなくとも、長期にわたり苦しい忍耐を強いられる、もしくは無味乾燥した夫婦生活を旅していくことに他なりません。従って、心を一旦冷やし、冷静に自分を見つめ直す過程である①②の視点は、③の最終判断に至る前段階において、必須の着眼点と言えます。

 . やはり、「離婚が最善の選択」と判断したなら・・・
 次の段階でも、冷静な対応と行動は必須です。大切なのは、離婚の意思を伝えるまでの時間を確保し、その期間に準備すべきことを集中的にやると決めることです。離婚は人生の一大事であり、相応の労力をかけ、次の人生に備えるべきイベントです。性急な対応は絶対回避してください。
 まず、離婚後のお金のやり繰りと生活環境について、しっかり思案し、目途を付けます。今後を見据えるうえで、お金の問題は避けては通れません。今、有している夫婦の財産をどう分けるべきでしょうか。自分の力だけで、問題なく生活を営んでいけるでしょうか。専業主婦であるならば、就職先の目途も付けておく必要もでてきます。子どもがいて、それを自分の親権に置くなら、養育を大きな問題なくこなせていけるでしょうか。住宅ローンが残っている居宅があるなら、それをどのように処理対応するか、等々目途を付けておくべき対象は、多くあります。
 いずれにしても、離婚意向を伝える前に、離婚後の自分の生活について、裏付けのあるしっかりしたイメージと計画を持った状態にしておかなければいけません。そのためには、離婚の準備項目と相手側との取り決めを要する離婚条件についてリストアップし、自分の希望のみならず、相手側の出方も想定しながら、ひとつづつクリアにしていく必要があるのです。(「離婚準備チェックリスト」を参照ください。☞PDFファイルを表示あと、不貞行為・モラハラ、DV・浪費癖等の悪癖を理由とした離婚なら、その証拠となる資料やデータを、この準備期間に確保しておきます(「証拠集めのリスト」を参照してください☞PDFファイルを表示
 離婚の意思を伝える前に、必要十分な期間を確保し、用意周到の準備と心構えを施すことが、後悔のない離婚に繋がります。そして、相手側との協議内容とその手続き、ルールに関する知識について事前に蓄えておくことも、忘れないでください。言うまでもなく、離婚は、恋人同士が恋愛関係を終結させるというような行為ではありません。家族関係の解消であり、人生の進路を大きく左右し、親族をも巻き込む重大事と再認識してください。

 3.別れの意志を伝える・・・・
 離婚準備を経て、協議での離婚を望む皆様が、相手側に「離婚させて下さい」と自分の最終意思を伝える局面になったとします。ここで、忘れてはいけないことがあります。多くの場合、離婚に関する話し合いは、複数回及び数か月の期間を要します。それを想定すると、話し合いを始めた状況で同居状態を継続することが精神的にも難しくなることもあると思います。それを想定し、事前に別居先を確保しておくべきです。顔を合わさずお互いに冷却期間を置ける状況を作り、話し合いに臨んだ方が決着を促進させることにもなるはずです。意向を伝える前に別居先に目途を付けておきましょう(なお、子どもがいる場合、子どもといっしょに別居したほうが、あとで親権取得を主張する際、有利に働く傾向があることも付言しておきます)。実際に別居を決めた場合は、前述の証拠資料等の取得漏れがないかどうかを確認しておいてください。為念ですが、民法上、夫婦には「同居義務」というものが存在します。従って、別居に際しては、相手側の同意のもと実施することを原則としてください。
 先に触れたように、離婚については、1回の話し合いで納得・合意するということにならないのが、通常の夫婦と思います。相手側が心の中に離婚の意識を秘めている場合を除き、別れを伝えても、「なぜ、離婚を望まれるのか理解できない」「自分は愛情が残っているし、やり直せるとも思う」「離婚後の生活がとても不安」 「実質片親になる子どものことはどうする」「配偶者がいない生活は想像もできないし、困る」等々、多くの場合、相応の反応・反論が予想されます。やはり、伝える内容と方法を考えて臨む必要があると思います。すぐに合意が得られなくとも、最低限、「少し考える時間が欲しい」との返答をもらうべく、これも周到な準備のもと行うべきです。ポイントは以下2つです。
 ①    伝える場所、時間(タイミング) 
 ②    伝える内容
まず、①については、当然冷静に話し合える場所が適切です。感情的になり大声を出す、威圧的な対応をされる等のリスクのある相手なら、喫茶店やホテルのロビー等周りに人の目がある場所も選択肢です。子どものいる家庭なら、勿論その同席は避けます。そして時間帯。休日の午前や昼間等が適切と思います。相手側に疲れが残っている、あるいは飲酒を始めている等が想定される夜間での切り出しは回避したほうがいいでしょう。また、話し合い難航や決裂を予想し、最初から親等第三者を介在させる選択肢もあるかもしれません。しかし、中立性がなく、一方に肩入れしがちな身内等の第三者を間に入れると、かえって話に収拾が付かなくなってしまうこともあるので注意が必要です(話し合い中に、高圧的態度や身体に危害を及ぼされるリスク等がある場合の検討対象と捉えてください)。次に②の伝える内容です。そのポイントを以下に整理します。

その結論に至った経緯と理由を伝える

愛情喪失、婚姻関係継続の不適切さ等につき、具体的な事実や経緯等を根拠に、決意に至った理由を分かり易くはっきり伝える。

決意の固さを理解させる

自分の愛情は一切戻らなく、家族として相手を支える気持ちも既に無いこと、関係改善の意志も一切ないこと等を伝える。結果的に婚姻関係の継続は苦痛しかもたらさず、そのことは双方にとって、マイナスでしかないこと  等々を訴求、理解させる。

相手側の非を相手側に理解させる

特に、不貞行為やDV、浪費癖等による精神状態や生活環境の悪化(裁判上の離婚理由)を原因とした離婚の場合、その裏付けとなる証拠を取得している旨を伝える。法廷論争に至った場合、証拠提示により、相手側の反論や言い訳が通用する可能性が小さいことを説明する。

離婚後の生活資金の収支、子どもの生活等の不安を取り除く

財産分与と就労先確保で生活面は当面維持可能なことや想定している子どもの養育カバー体制について説明する。

感情のみを前面に出さず、落ち着きのある言葉で上記ポイントに則し、明確に意志を伝えることが肝要です。反論に対しても、聞く耳を持つ姿勢を示したうえで、同じ主旨の意向や理由、説明を繰り返し丁寧に伝えます。ときに自分の非については認めるところは認め、相手側を煽るような言動は控えてください。特に初動においては、離婚につき、「真剣に向き合わなければならない」と相手側に強く認識させることを第一の目的としてください。日を置いて話し合いを重ねる過程で、粘り強く意志の固さを示し、「離婚止む無し」との妥協に繋げるという想定で臨むべきです。
以上、本稿では、離婚に際しての心構えや準備の重要性、意向通知の注意点を解説してきました。次項では、
離婚における相手との具体的な取り決め条件について解説します。
                                  (2026年4月 文責:小山田 真)

離婚条件の整理、話し合いについて(1)・・・

「離婚に合意した」という事実のもと、大まかな話し合いだけで、すぐに離婚届を役所に提出することは、後々の後悔に繋がります。勿論、これから解説する離婚条件については、離婚成立後に当事者が話し合いで決めることも可能ではあります。しかし、後で、「言った、言わない。それは困る。」等で揉めるとか、時間の重荷がのしかかることを想像すると、離婚届提出前に、必要な条件取り決めをしっかり行い、新たな気持ちで人生を再スタートさせる気構えを得られたほうが、いいに決まっています。ただし、この離婚条件取り決めもすぐに折り合う性質のものではありません。これも、話し合いによる条件決定に際し、事前準備をしておくことが、極めて重要です。

1. 話し合いの遡上にのせる項目(条件)を確認します・・・
最初に、以下を参照してください。
<話し合いで決めるべき項目(条件)>

―財産・金銭に関する条件―

補足

    財産分与

婚姻開始以降、夫婦で築き上げた財産(共有財産)、夫婦で負った債務を分割します。法律上の決めではありませんが、基本の分割割合は1/2となります。共有財産は個別に帰属先を決めます。また、直近の法改正で財産分与の請求期限は、離婚後5年以内となっています。

    慰謝料(精神的損害賠償を要する場合)

不貞行為、DV、モラハラ等相手側から精神的な苦痛等を受けた事実がある場合、金銭的な請求で賠償させます。必要に応じて、弁護士の介在や調停に付すことを検討します。

    養育費(子がいる場合)

子の監護権を有する配偶者に対し、通常、子どもが社会人となるまで、養育の補助目的で支払われるものです。子の成長促進のためには、大切な決め事です。

    年金分割

厚生年金報酬比例部分を対象に、婚姻期間分を分割します。また、分割割合に上限があることに注意します。老後資金の確保目的であり、失念しないよう注意してください。

―子どもの生活に関する条件―

補足

    親権と監護権

単独親権、又は共同親権を選択します。また、子と同居し、監護する者を決めます。争点になりやすい部分です。子の意向も確認しておきます。

    面会(親子)交流

独り身となった親が子と面会する条件(頻度や時間等)を決めるものです。子の意向も確認しておきます。

  通常、以上の条件それぞれの取り決め内容を「離婚協議書」に記載し、夫婦間
    の契約として、離婚成立以降の権利と義務として定めます。条件決定の協議を行
    う前に、それぞれの項目につき、自分の希望を整理し、固めておくべきです。そ
    の際、話し合いにおいて、譲歩できる部分と出来ない部分も明確にしておきま
    す。

2. 離婚条件、項目ごとの検討                                 
<財産分与>
表で示した様に、基本は1/2の分割割合となります(一部の例外を除き、専業主婦であっても、財産形成の貢献度合いは同じとの考え方に基づくからです)。ただし、離婚後の生活や相手側の非(過失)を加味した内容を織り込み、内容を決定することも可能です。分割の対象財産は、所謂共有財産と称するもので、婚姻後に取得した財産を対象にし、婚姻前に個人的に築き上げた財産や親からの相続・贈与財産(これを特有財産といいます)は除きます。債務(借金)にしても、夫婦が共同生活をするうえで必要とした債務を対象とし(共同債務)、夫婦どちらかが、その個人の効用目的のために負ったものは対象外になります。なお、共有財産・共同債務については、その名義の所在は関係ありません。金銭的なもの以外も含め、財産分与の対象を話し合いの前に洗い出し、整理しておいてください。また、協議では、1/2の基本分割割合に拘る必要もありません。次のような考え方の財産分与も可能なので参考にしてください。
・慰謝料的財産分与~本来、慰謝料とはそれを払うべき人の個人的な責任負 
 担債務であり、財産分与の対象ではありません。しかし、その個人の経済状況
 が厳しい場合等、財産分与の際、分割取得分の増減で、それを含める処理を
 行います。
・扶養的財産分与~離婚後、生活していくうえで経済的弱者となる者に対し、
 多めの財産を分与する対応をする、あるいは離婚後数年間、その者が自立し
 て生活できるまで、生活支援を目的に金銭の定期給付をすること等を約束す
 るといった処理を行います。
財産分与において、一番の難題は不動産の処理です。方法として、①換価し 
て、代金を分け合う②高額な物
件ならば、その取得を希望する者が、それに見合う代償金を相手側に分与して清算する等の対応が必要になります。もっと悩ましいのは、住宅ローンが残っている物件です。本稿では、詳しくは触れませんが、ひとつだけ言えることは、「任意売却を行い、ローンを完済、残金を分割する」が何よりすっきりした処理パターンであることははっきりしています。しかし、双方の分与意向、ローン残額と実際の不動産評価額の乖離状況等によっては、今後の債務負担につき別途の対応が必要となるケースも多いのが実情です。特に、ローン返済の継続を伴う場合、金融機関との打ち合わせを要する事項のため、簡単な処理対応とはなりません(これらの問題については、直接、当事務所に相談ください)。なお、金融財産、不動産のみならず、動産や将来の受給が確実な退職金、解約返戻金受領可能な生命保険契約等も財産分与の対象となるので忘れずにカバーしてください。また、財産分与の対象財産及びその評価額の決定基準日は、別居開始時又は離婚時の早いほうとなります。以下、例を挙げて、1/2を分割基準とした、分割の基本の考え方を示してみます。
   
  (例)共有財産内訳~預貯金1500万円、ローン残債あり居宅(時価2000
     円、残債800万円)
   ⇒預金を夫が取得、居宅を妻が取得、ローン残債を等分負担したとする
     と・・・
   (純資産の計算)総資産3500万円(1500万円+2000万円)-負債800万円
          =2700万円
     ※2700万円を2等分すると1350万円が各自の取得すべき純資産額。
    ⇒妻の取り分は2000万円-400万円(ローン負担分:800万円/2)=1600
       万円であるとこ
ろ、これは250万円(=1600万円-1350万円)超過
               取得となる。これを夫に支払
う必要がある。夫は1500万円-400
               円=1100万円が取り分となるため、不足分250万円(=1100
万円-
               1350万円)を妻より取得する権利がある。

              次項「
離婚条件の整理、話し合いについて(2)・・・」につづく

離婚条件の整理、話し合いについて(2)・・・

<年金分割>
 離婚における年金分割は、厚生年金の報酬比例部分がその対象となります。婚姻
 期間中の保険料納付実績
をもとに、納付実績の多い方から少ない方へ分割するこ
 とになります。分割割合の上限が
50%となっていることから、それに注意をして分割
  割合を話し合うことになります(合意分割)。なお、「
3号分割」という制度もあること
 留意してください。これは、合意を要さずに、当事者一方(厚生年金第
3号被保険
 者)が、請求することによ
り、機械的に2号被保険者の受給する年金の1/2を取得で
 きる制度です。ただし、平成
204月以降の婚姻期間が対象になるので注意が必
 要です。なお、協議離婚により、年金の合意分割を取り決める場合、離婚
協議書を
 公正証書にして、条項を記載しておいたほうが後々便利と言えます(単独で年金事
 務所の手続きを
できるからです)。また、年金分割の請求手続きは、離婚後5年以内
 という期限がありますので、これも注意してください。加えて、国民年金は年金分割
 の対象にはならないこと、国民年金基金や私的年金である企業年金、年金保険は
 その脱退一時金等の評価額を基準に年金分割ではなく、財産分与の対象となるこ
 とに留意ください。
 <慰謝料>
  表で示したような相手側の非(過失)にもとづいた離婚理由である場合、被害者とし
 て正当に請求できる金額を
決めてください。過去、裁判例等をもとにした相場水準
 については、ネット情報等を参考に事前確認しておい
た方がいいです(例えば、不
 貞行為を原因とした場合、
100万円~500万円がターゲット水準となり、額はその
 質性の度合いに依存する・・等の情報を得ておきます)。
 慰謝料請求については、出来れば、協議に合わせ、示談交渉で合意を目指すべ
 き項目と思料します。慰謝料
は、基本的に加害者の個人的債務負担となるため、調
 停→裁判(審判)へと移行しやすい項目であるこ
とは事実です。しかし、相手側によ
 り強く、徹底的に反省を促すと言った場合を除き、それに費やす時間を含めたコス 
 ト負担を考えるべきです。やはり、次の大事なステップを考えると、事前に取得した
 証拠等を提示のうえ、当事
者同士の話し合いで折り合いを付け、早期解決を目指
 すということが効率的と言えると思います。また、一括で
の支払いを請求するのか、
 分割払いで対応させるのかも相手側の事情に合わせ選択ができること、慰謝料請
 求には、「離婚時から3年、その事実行為認識から3年」の時効(期限)があることに
 注意してください。
 <親権等>
 未成年の子がいる場合、この親権保有者(親権者)の取り決めも協議の争点になり
 がちです。親権者とは、そ
の子の法定代理人(法的な行為の代理権者)になること
 を意味します。一方で、監護権者とは、その未成年の
子と同居し、中心的に監護・
 養育する立場の者を言います。この親権・監護権を一体で取得することが一般的
 ながら、それを分離して指定することも可能です。以前までは、離婚後の親権保有
 をどちらか一方に決める必
要がありましたが(単独親権)、直近の法改正により、「共
 同親権」の選択が認められるようになりました。子の親
権はどうしても譲りたくないと
 主張が対立した場合、子の重要事項についてはあくまで両親として協議のうえで

 めたいといった場合、この共同親権が選択肢になると思います。また、話し合いで
 共同親権を選択した場
合、その親権行使内容も離婚協議書に記載しておくべきで
 す。例えば、親権行使につき、子の全ての法律行
為や進路決定、財産管理、医療
 行為等の重要事項を両親の合意ありきとしてしまうと、生活継続上不便になること
 があります。それを、簡単もしくは緊急を要する医療行為、教育推進や日常の生活
 手 続きの決定に関しては、監
護権を持つ者に委ねる等と協議書に定める対応をし
 ておくことで、後々の養育活動がかなりスムーズにできると
いうことになります。
  今回の法改正の大きな転換点は、婚姻関係の有無に拘わらず、父母は自身の子
 の養育責任と義務があることを明記したことです。離婚後においても、子の利益を
 重んじ、その健康的な成長のためには、父母双方の関与が重要である旨を明確に
 したのです。離婚したのだから、離れた子どもの養育には関わる必要がもう無いとい
 う考え方は廃除しなければなりません。
 <養育費>
 子がいる場合、その養育費についても、しっかり話し合い、合意内容を離婚協議書
 に明記しておきます。通常、監護権(親権)を持つ親に対し、子ども一人当たり、
1
 月単位でいくらの資金援助をするか、支払期限はいつまでとするか等を話し合うこ
 とになります。定期で定額の給付の取り決め以外にも、子の成長や緊急事態発生
 等費用増大を想定し、給付金増額条件についても協議してください。支払期限に
 ついては、子が成人するまでとする、大学を卒業までとする等が考えられます。ま
 た、監護する親が再婚し、経済的に安定した時点で給付を打ち切るといった等の条
 件を付けることも可能です。
 養育費の標準的な目安は、裁判所や日弁連が公表している「算定表」等を参考に
 してください。養育費算定の基準は、それを支払う者の年収実績により計られます。
 なお、養育費についても、直近の法改正により新たな決まりが付されました。それ
 は、①離婚から養育費取り決めとその実際の支払いまでの期間については、「法定
 養育費(月額
1人あたり2万円)」の規定対象となったこと②養育費については、その
 支払い義務者から何よりも優先的に弁済を受けることができること(先取特権の付
 与)の
2つです。この法改正の背景としては、現状、母子・父子家庭である世帯にお
 いて、実際に養育費を受給できている世帯の割合がかなり低水準になっており、子
 のための養育環境が不十分な状態に置かれていること等があります。養育費支払
 いにつき、半ば強制力を与えることにより、子の養育環境の改善を目指した結果と
 推察されます。
 <親子(面会)交流>
 離婚後、子のもとを離れる親が、子と交流する機会を確保することを目的に、その
 権利条件を話し合いで決めます。直近の法改正において、子を想う親の権利という
 よりは、子の健全な育成を推進するための子の権利として位置付けられていると思
 料します。勿論、
DV等の懸念材料を有する親に対しては、面会交流が不適切であ
 る場合もあり、その機会自体を拒絶することも可能です。しかし、一般的に、子にと
 っては両親から相応の愛情を得られたほうが、精神的に安定することは明白と言え
 ます。その意味では、親の感情だけで、離婚後は絶対会わせないと決めてしまうこ
 とは、子の利益になりません。その観点を持ち、子自身の意向をも汲み取ったうえ
 で、協議を進めてください。決める内容は、月単位等の面会頻度や面会時間、宿
 泊を伴う面会の許可、学校の授業参観への出席の可否等になると思います。
 

  以上、離婚協議で話し合うべき重要事項について概観してきました。勿論、これ以外の項目についても取り決め、離婚協議書に記載することは可能であり、自由です。この点をしっかり決めておけば良かった等と後悔しないように、協議対象項目を話し合い前に洗い出しておいてください。なお、項目(条件)毎に協議で合意を得られなかったときは、調停等裁判所に持ち込んでの取り決めをする必要が出てきます。そうなった場合、慰謝料に関しては、主張の裏付けとなる証拠資料が重要になること、子どもに関する権利条件については、子の利益が何よりも尊重されることになることを念頭に入れてください。

 離婚をすることは、結婚をすることよりも倍以上の労力がかかります。事前に調べ、準備しておかなければならないこと、相手側の納得と合意のもとひとつひとつの条件を取り決める必要があること等、いくつかのハードルをこなさなければなりません。逆に、感情が優先し、「とにかく早く離婚届の提出を」と事を急いでしまうこと、詳細の詰めを疎かにすることは、後で、後悔といらぬ苦労に繋がってしまう短絡的な判断と言えます。離婚は、新たな人生のステージを踏み出すうえでの重要イベントですが、大きな心の切り替えに加え、違う苦労の発生を受け入れる強い気構えが必要な行為です。それを決意したなら、まず、準備と推進計画に着手しましょう。感情の昂ぶりを抑えた冷静な行動と判断が、心機一転の人生に繋がります 

  離婚の相談、手続きのアドバイス、離婚協議書や示談書等の作成については、当事務所にお気軽にお問い合わせください。
                                                         (2026年4月 文責:小山田 真)